ロキソニンS。馴染み深く、使ったことがある人も多い製品だと思います。ただ、いざ買おうと思ったときに「薬剤師による説明が必要です」と言われたり、レジで少し待たされたりして、購入にちょっとしたハードルを感じたことがある人もいるかもしれません。それは、ロキソニンSが第1類医薬品、つまり薬剤師による説明が法律上必須の区分に入っているからです。
そんなロキソニンSが、2026年7月末、「指定第2類」という区分に変わるかもしれない、というニュースが流れてきましたね。
このニュースだけを見ると、「薬剤師がいなくても買えるようになるなら、それだけ安全性が高いと認められたということかな」と受け取ってしまいそうになります。しかし、実はそう単純な話ではありません。
要点:区分が変わっても、薬そのものの注意点は変わらない
リスク区分の変更は、薬の中身(成分・用量・効き目)が変わることではありません。あくまで「販売するときに、どのレベルの説明が必要か」という売り場のルールが変わるという話です。
指定第2類になったとしても、ロキソプロフェンという成分が持つ効果や副作用のリスクそのものが小さくなるわけではありません。むしろ今回の議論では、区分を下げる代わりに、登録販売者による確認体制の強化や研修といった、別の形での安全対策が条件として求められています。
「区分が下がる=手放しで安全になった」というより、「安全を確保する仕組みが、薬剤師中心から登録販売者中心に移る」というのが実態に近いイメージです。
対象になる製品、ならない製品
「ロキソニン」と名のつく製品すべてが今回の話に関係するわけではない、という点を先に整理しておきます。
リスク区分は製品名ではなく有効成分に対して指定されるものです。ロキソプロフェンナトリウム水和物を配合した内服薬であれば、以下のシリーズが今回の対象に含まれます。
- ロキソニンS
- ロキソニンSプラス
- ロキソニンSプレミアム
- ロキソニンSクイック
- ロキソニンSプレミアムファイン
一方、ロキソニンSテープ、テープL、パップ、ゲル、ローションといった外用薬(貼り薬・塗り薬)のシリーズは、今回の話とは無関係です。これらはすでに2020年8月25日付で第1類から第2類へと区分変更が完了しているためです。
そもそもリスク区分って何を決めているのか
第1類・指定第2類・第2類・第3類という区分、なんとなく「数字が大きいほど弱い薬」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、これは薬の効果の強さのランキングではありません。販売時にどれだけの情報提供が必要かを定めた制度です。
| 区分 | 説明の扱い | 陳列などの規制 |
|---|---|---|
| 第1類 | 薬剤師による書面での説明が法律上の義務 | 陳列にも厳しい規制がある |
| 指定第2類 | 登録販売者による説明は努力義務(法的な義務ではない) | 情報提供を行う設備から一定距離(7m以内など)に陳列する規制がある |
| 第2類 | 登録販売者による説明は努力義務 | 指定第2類ほど厳しい陳列規制はない |
| 第3類 | 法律上の説明義務なし | 陳列規制なし |
ここで意外と知られていないのが、指定第2類でも「必ず説明してもらえる」わけではないという点です。登録販売者による説明は努力義務であり、第1類のような法的な義務ではありません。「誰かが必ず注意点を教えてくれる」とは限らない、というのが実態に近い理解だと思います。
今回、具体的に何が議論されているのか
2026年7月29日、厚生労働省の薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会で、ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニンSなど)について、現在の第1類から指定第2類へのリスク区分変更が条件付きで了承されました。
条件として挙げられているのは、登録販売者による販売時の確認・説明体制の整備、研修の実施、重篤な副作用が起きた場合の対応、製造販売業者による資材提供や販売実態調査などです。厚生労働省は今後、これらの条件や安全対策の内容を整理したうえで、一般からの意見募集(パブリックコメント)を行う予定です。
つまり今の段階は正式な区分変更が決まったわけではありません。
議論の背景にあるデータ
ロキソプロフェンは2015年に第1類として区分指定されて以降、重篤な副作用の報告が63件ありました。主な症状は多形紅斑やスティーブン・ジョンソン症候群などの皮膚障害、アナフィラキシー反応、肝障害などです。
ただし製造販売業者は、これらをNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)全般として既知の安全性プロファイルの範囲内と評価しており、ロキソプロフェンに特異的・突出したリスクは認められないとしています。また2026年5〜6月に実施された適正使用状況調査では、不適正使用率は項目により0〜5.9%で推移し、妊娠後期を含む妊婦による服用は確認されなかったとのことです。
実は「2度目」の議論だという話
2014年11月にも、同様にロキソプロフェンの指定第2類への変更が安全対策調査会で一度は了承されたものの見送りとなり、引き続き第1類とすることが決まった経緯があります。
当時のパブリックコメントでは、指定第2類への変更に賛成する意見は少なく、むしろ「鎮痛作用が強いこの薬は長期使用による乱用のおそれがある」「20代〜40代の女性の使用者が多く、妊娠中・授乳中の女性への影響が懸念される」といった理由で、第1類のまま据え置くべきという意見が多く寄せられていました。医師会関係者からも、ロキソニンは他の鎮痛剤と比べて出荷数が多く第一選択薬に近い状態にあるため、家庭にストックされている可能性が高く、妊婦が誤って服用してしまうケースが考えられる、という慎重な意見が示されていたようです。
過去に懸念とされた点(乱用リスク、妊婦への影響)が今回どう評価されているのか、注目していきたいですね。
よくある誤解を整理する
「区分が下がった=安全性が確認されて危険じゃなくなった」ではない
区分の変更はあくまで販売制度上の話であり、薬そのものの作用や副作用のリスクが変わるわけではありません。
「薬剤師がいなくても買える=説明なしで気軽に買っていい」ではない
指定第2類でも登録販売者からの説明を受けるのが望ましく、持病がある場合や他の薬を併用している場合は、説明の有無にかかわらず自分から伝えることが大切です。
「第1類の方が効果が強い薬」ではない
区分と薬の効き目の強さは無関係です。区分はあくまで販売時の説明・陳列に関するルールを定めたものです。
今、知っておきたいこと
現時点でこの記事を読んでいる方に伝えたいのは、次の3点です。
- 区分変更はまだ「審議会レベルで条件付き了承」の段階であり、正式決定(パブコメを経た告示)はこれから、ということ
- 区分がどうなっても、消化性潰瘍の既往がある方、腎機能が低下している方、妊娠中の方などに関する添付文書上の注意点は変わらないこと
- 購入時に登録販売者から特に説明がなくても、症状や併用薬、持病については自分から伝えるほうがよいということ
区分の変更は、あくまで「売り場での説明の仕組み」が変わる話です。薬そのものの注意点やリスクは、区分がどう変わろうと変わりません。今後も、正式な発表があり次第追記していく予定です。
参考文献
- 厚生労働省 薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料(2026年7月29日開催分)
- ロキソニンS 添付文書(第一三共ヘルスケア)


コメント